令和2年度卒業式式辞

皆さん、ご卒業おめでとうございます。青森県立保健大学は、本日ここに、令和2年度の学部卒業生223名、大学院博士前期課程生7名、博士後期課程生3名に、卒業証書・学位記を授与いたしました。本学の教職員を代表して、心からお祝い申し上げます。

 

この一年、新型コロナウイルス感染症拡大は、人々の健康だけではなく、生活、経済、社会など様々に影響を及ぼし、私たちの暮らしを一変させました。いまだ世界レベルで 新型コロナウイルスとの戦いとコントロールへの挑戦が続いています。本学では休校、行事の中止や変更、遠隔授業の導入などを行ってきましたが、学生のみなさん、教職員、地域の方々の感染防止と安全を第一に、細心の注意を払いながら、可能な限り大学活動を継続することとして取り組んできました。そして、本日ここに233名が無事に卒業、修了を迎えることができましたのは、ご家族の皆様、コロナ禍においても現場での実習などを可能な限り受け入れ、変更を快くご理解くださった保健医療福祉関連施設の皆様方、設置者であります青森県知事をはじめ、ご来賓の皆様の、ご理解、ご指導、ご支援があってのこととありがたく、この場をお借りして心から感謝を申し上げます。

また、この場にいる卒業生、修了生の皆さんは、リモートによる授業や就職面接など、新たな致し方に適うよう、新しいことを習得するべく努力されてきたことと思います。移動が制限されるなかでの就職活動にも苦労されたことと推察します。学生生活最後の年、先が見通せない中で、たいへんな時を過ごしてきたことと思いますが、「試練は人を強くする」といいます。この時を過ごしてきた皆さんは、コロナ禍で鍛えられた頼りになる保健医療福祉の担い手です。“ピンチをチャンスにTough times bring opportunity.”を胸に、自信をもって旅立ってほしいと思います。

 

本学では“復興”と“正しく恐れる”を、未知なるしい型コロナウイルスと向き合う拠り所として、取り組んできました。

“復興”とは元に戻すだけではなく、弱かった部分を補強しさらに強固に堅牢にするという意味があります。皆さんに伝えたかった“ピンチをチャンスに、Tough times bring opportunity.”と、まさに目指すところは同じです。住まい、集う場所はこれから別々になりますが、皆さんと共に大学はこの経験を生かして、注意深く考えて未来に向けて備え、より強固な大学を創り上げていきたいと思っています。

“正しく恐れる”という言葉は、もともとは寺田虎彦が浅間山の噴火の際に、「怖がらなさすぎたり、怖がりすぎたりするのはやさしいが、正当に怖がることはなかなか難しい」といったことに端を発しています。私は福島の原発事故の際に使われた言葉として記憶していましたが、その意味は、リスクについてよく知り、状況をよく理解して対応するといった意味で用いられていました。私たちは、どのような未知なる出来事が起こっても、冷静さを保ち今世紀の科学の知識に基づきながら、過度に恐れることでもなく、軽視することもなく、未曽有の出来事に向き合っていきましょう。

 

本来であれば、この日は、多くの方々とこの場で共に祝い、喜びを分かち合う、晴れの場になったことでしょうが、すべてが異例づくしのこの1年となりました。令和2年は、科学、社会、そしてケアについて大きな挑戦を受けた年であったともいえます。ヒューマンケアを実践できる人材の育成を目指す分野で、触れ合うことや思いやることが危機に瀕しました。社会システム、家族システムも見直しを余儀なくされました。しかし、多くの科学者、専門職者の果敢なる挑戦により多くの人たちが救われてきました。新たなテクノロジーは対人援助の専門職を育成する大学であっても様々な可能性を見せてくれました。

皆さんがいま着用しているアカデミックガウンと角帽が意味するところの、学問を修め、学位を取得した保健医療福祉の専門職として、研究者として、これからもどうぞ多くの人たちに貢献していくことを心から期待しています。

 

本学の講堂に、ねぶた師の竹浪比呂央氏の指導の下、学生たちが制作した「鍾馗」のミニねぶたがあります。鍾馗は「厄除けと疫病を祓う守り神」であるといわれます。新型コロナウイルス感染の平癒と、人々の健康を守ってくれるよう、鍾馗様に願いを託して、そしてこの船出が穏やかであることを祈って式辞といたします。

 

令和3年3月10日

公立大学法人 青森県立保健大学

理事長・学長 上泉和子

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