令和5年度卒業証書・学位記授与式 式辞
本日ここに健康科学部を修了し、学士の学位を授与された219名の皆様、大学院健康科学研究科博士前期課程を修了し、修士の学位を授与された11名の皆様、博士後期課程を修了し、博士の学位を授与された5名の皆様、おめでとうございます。大学を代表して、お祝い申し上げます。皆様の日々の学修や研究を様々な形で支えてくださいました、ご両親、ご家族、関係者の皆様にも、心よりお慶び申し上げます。また、設置者である青森県、本学の教育・研究にご協力をいただいております関係の皆様に改めて感謝申し上げます。
学部を卒業される皆様は4年前、そして大学院を修了される皆様の多くは2、3年前に、様々な地域からそれぞれの目標と希望をもって、本学に入学されたことと思います。その時の気持ちを覚えているでしょうか。新型コロナウイルス感染症の拡大という、これまでどこの誰も経験したことの無い状況の中で、多くの制限がありながらも、今日までしっかりと学修や研究に励んでこられた皆様に敬意を表します。そして、皆様と一緒に歩んできた教職員の一人として、本日このキャンパスから皆様を送り出すことを、嬉しく、また誇らしく思っています。
本学の理念であるヒューマンケアの根幹には、ヒューマニズムという、人として存在する上で大切な理念があります。私たちは、皆様一人一人のかけがえのない人生の時間をお預かりして、このキャンパスで一緒に学んできました。その成果として、様々な知識や技術とともに、自律的・創造的な考え方、人や地域に対する深い理解、多様性を理解しそれを包摂する、すなわちインクルーシブな心、グローバルな視野、そして保健医療専門職としての資格・免許、研究成果など、多くを得ることができたと思います。これらを生かして、さらにご自身の自由な発想と志を新たに、人に対する尊厳を大事にしながら社会の様々な場で活躍していただきたいと願っています。
一方、今日の世界に目を向けると、戦争や紛争を含めて、さらに混沌とした情勢となってきています。複雑な要因がその背景にあると思われますが、根本には、多様性を認めない偏狭な心、例えば、自分の国や地域、そして自分こそが“ファーストである”といった考えもあるように思われます。世界人口の急増が続く中で、日本では止まらない急速な少子化や人口減少などが極めて深刻な問題となっていますが、人口の囲い込みといった発想ではなく、国や地域そのものがより魅力的で、人に優しく、生活しやすい社会となるように、幅広い視野、多様な経験や学びから智慧を出していく必要があると思っています。現在、日本が直面している保健医療福祉に関わる諸課題に対して、多様な連携の下で展開される「地域包括ケアシステム」という考え方やその基盤となる制度、各地域における実際の取り組みが始まりました。本学では、かねてより「多職種連携・協働」を重視し、本日学部を卒業される皆様から始まった新カリキュラムでは、社会おける多様性の理解とともに、「多職種連携教育」にさらに力を入れてきました。また、大学院においても、専門職などの縦割りを無くした横断的な研究領域を設け、様々な専門的バックグラウンドをもつ皆様が、同じ授業や研究発表の場で大いにディスカッションし、切磋琢磨してきました。このような学びを経験した学部及び大学院修了生の皆様は、自らのことを、“未来を担い、創造することのできる人材”であると自信をもってほしいと思います。多くの学部卒業生は、まずは保健医療福祉に関わる既存の制度の中で、専門職としての役割を担うことになると思いますが、さらに広い世界での経験と勉強を深めて、未来に向けた新たな業務改革、制度設計や政策形成、人材育成、先進的な研究や開発等にも貢献して下さい。本学は来年度25年目を迎え、学部の第一期生を初めとして様々な場で活躍している同窓生が多数います。新たに設けた「特別奨励賞」では、そのような先輩たちの功績を称えるとともに、本日本学を巣立っていく皆様への応援メッセージとして、式典の後に紹介いたします。
また今回から、大学院修了の皆様には、式典後のこのステージで、お一人お一人に学位記の授与を行います。2月に行われた修士論文公開審査会、博士論文公開発表会では、素晴らしい研究発表とディスカッションが行われました。「大学」というのは、単に知識や技能を伝授する場ではなく、研究・開発を含めて、未来に向けた価値の創造を目指しています。本学で学ばれた大学院生の皆様の多くは、専門職として現場実践を行いながら、ご自身の専門性と現場での実践の質を高めたいという尊い志をもって入学されました。その志は、じゅうぶんにかなったでしょうか。研究というのはすぐに成果が出て、社会実装に繋がるというものではありません。修了後も引き続き初期の志を保って、実践と研究を結びつけていきましょう。修了後もどうぞ本学に来て、研究を続けてください。学部卒業の皆様も、将来大学院などで一緒に学ぶことができると、とても嬉しく思っています。
卒業生、修了生の皆様、この青森県立保健大学は、これから何年経っても皆様のホームグラウンドです。いつでも気軽に遊びにきてください。また、皆様ご自身やその職場などでの課題を解決したいと思ったときには、是非とも相談してください。そして私たちも皆様を頼りにして、これからの教育や研究、そして地域貢献活動などを進めていきたいと思っています。教職員一同、同窓会の皆様とともに、青森県立保健大学を発展させるよう努力していきます。
本日は、ご卒業、誠におめでとうございました。またどこかでお会いできますことを楽しみにしています。皆様のご発展を心より祈念し、式辞といたします。
2024年3月7日
青森県立保健大学学長 吉池信男