AJHW抄録(日本語版)
https://doi.org/10.24552/00002160 ©青森県立保健大学
看護系大学におけるフルスケールシミュレーション教育推進を目指して(第1報)―卒業直前の学生を対象とした急変時プログラムの実践報告―
千葉武揚,小池祥太郎,本間ともみ,福岡裕美子,木村恵美子
青森県立保健大学健康科学部看護学科
抄 録
〔目的〕 看護学生が実習の場で看護技術を経験できる機会は,患者の高齢化や重症化,看護業務の多様化などの背景から限定されてきている。その結果,看護基礎教育で習得した能力と看護師として現場で必要とされる能力に差が生じ,安全な医療・看護の提供が不十分となることが懸念されている。厚生労働省(2003)は看護基礎教育におけるシミュレーション教育の充実を推進しているが,看護系大学ではフルスケールによるシミュレーション教育が充実しているとはいえない状況にある。そこで,卒業直前の学生を対象にフルスケールシミュレーションプログラムを作成・実施を試みた結果から,課題を明らかにすることとした。
〔方法〕 はじめに阿部(2008)を参考にプログラムを作成した。次に24名の参加者に口頭及び文書を用いてプログラムに関する説明を行い,同意を得た後,プログラムを実施した。参加者の記録内容から学習目標達成度を集約した。さらに実践場面の振り返りに関する記録は,内容を意味の通じる文節単位で区切り,類似するものをまとめてカテゴリー化した。
〔結果〕 参加者は卒業直前の4年生24名で,学習目標達成度は設定した4つの目標のうち「患者の異変に気付く」は54%の学生が達成でき,「必要な観察をする」はバイタルサインの項目により50~71%の達成状況であった。一方「応援要請する」は4%,「報告ができる」は0%だった。実践場面の振り返りでは〈バイタル測定がうまくできない〉,〈観察後,必要なケアに結びつけることができない〉など, 5 カテゴリーに集約された。
〔結論〕 シナリオ作成の方法や演習場面におけるファシリテーターの関わり方などについて課題が明確となった。
《 キーワード》 シミュレーション教育, フルスケールシミュレーション, 急変, 看護教育, 卒業直前