栄養生命科学研究室
(R6.12.25更新)
基礎研究・実用技術領域 博士前期・後期課程
教授 佐藤 伸 サトウ シン(Shin SATO) |
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<連絡先> s_sato3@(@以下に、ms.auhw.ac.jpを加えてください) |
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当研究室を紹介します
当研究室のミッションは「食品成分の未知なる機能を解明し、人々の疾病予防を通して健康寿命の延伸に役立 てる」ことです。私たちが摂取する食品成分は、生命活動の維持のために、単にエネルギーとなるだけではな く、生体を構成するさまざまな物質に素材を供給したり、生理機能の制御因子となったりします。
私たちは、 疾病にかかわる種々の因子を制御するような食品成分の探索とその制御機構の解明にチャレンジしています。
主な研究テーマ
□ 妊娠期や授乳期の低栄養により生じる糖尿病や肥満の発症機構の解明とその予防
近年、妊娠期や授乳期の母体の栄養状態が悪いと、その母から生まれた子は、成長後に肥満、糖尿病、高血圧などを高率に発症することがわかっています。これはドーハド説(DOHaD;Developmental origins of health and disease)といわれ、胎児期あるいは新生児期の栄養環境が、何らかの形で記憶され、将来の肥満や2型糖尿病などの発症に影響を及ぼすとされています。栄養状態がよくない母体や生まれた子の体内では、いったい何が起こっているのでしょうか?
長期にわたる過剰の果糖摂取は、肝臓や腎臓に障害を及ぼすことがわかっています。そこで、私たちの研究室では、授乳期に低栄養食に茶カテキン類やブロッコリーパウダーを添加した飼料を与えた母親に育てられた仔ラットの離乳後に、過剰の果糖を与えたところ、仔ラットの肝臓や腎臓の炎症が軽減するという結果を得ています。茶カテキンやブロッコリーパウダーは、将来の過剰の果糖によって生じる、将来の肥満や2型糖尿病などの発症に影響を及ぼすかかもしれません。
□ 潰瘍性大腸炎の発症機構の解明とそれを予防する食成分の探索
潰瘍性大腸炎は、大腸において炎症が生じる慢性疾患であり、近年、その患者数が急激に増加しているといわれています。潰瘍性大腸炎の予防や治療には、様々な医薬品が開発されています。私たちは、ある種の食成分で予防・改善はできないだろうかと探索を続けています。たとえば、インドネシアで食されているメリンジョは、抗炎症作用や抗酸化作用を持っているといわれています。私たちは、メリンジョパウダーをデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発UCモデルマウスに与えたところ、炎症細胞の浸潤を抑制し、さらに、炎症に関与する転写因子であるNF-κBの発現を抑制することを報告しています。
□ 廃棄物を生活習慣病の予防に役立てる-木質系バイオマス・リグノフェノールの生理調節機能について-
リグニンは、植物の細胞壁を構成する主要成分であり、地球上で生合成される有機物としてはセルロースに 次いで多いのですが、最大ともいえる未利用資源となっています。リグノフェノール(LP)は、環境廃棄物 となっている木材、稲わら等の植物の細胞壁からも得られる新素材です。広い意味では、ポリフェノールといってもよいでしょう。現在、工業的な研究開発は進んでいますが、疾病の予防における生理調節機能につい てはほとんどわかっていません。
私たちは低分子化したLPの生理調節機能を解明するために、高脂肪食誘発肥満ラットにLPを与えたところ、高脂肪によって生じる腎障害を改善しました。すなわち、腎臓の機能(BUN値の低下)、炎症や線維化などの障害を軽減しました。
研究キーワード
□ 妊娠期・授乳期低栄養
□ エピジェネティック制御
□ 植物由来ポリフェノール化合物
□ AMP活性化プロテインキナーゼ
□ 潰瘍性大腸炎
□ マクロファージ浸潤
□ オートファジー
教員が担当している主な科目
□ 生化学特論
□ 健康栄養科学特論
□ 食品栄養学特論
□ 学術英語読解
□ 基礎健康科学研究特論
院生の研究テーマ・研究実績
博士前期課程
□ 胎生期・授乳期の低栄養に起因する心肥大の病態解析ならびにカテキン類による保護効果の評価に関する研究(2014–2015)
□ Protective effect of Bangle (Zingiber purpureum) extract on inflammation via AMPK/NF-κB signaling pathway in mice with dextran sulfate sodium-induced colitis. (2022–2024)
博士後期課程
□ Physiological roles of azuki bean (Vigna angularis) polyphenols in oxidative stress and inflammation in rats with hypertension. (2008– 2010)
□ Studies on effects of plant polyphenol-containing extracts intake during lactation on the obesity-related metabolism in adult rat offspring predisposed by maternal nutritional status. (2015– 2017)
□ 胎児期および乳児期に低栄養に曝され離乳後にフルクトース負荷された雌性仔ラットの腎臓におけるNrf2およびその標的酵素に及ぼす乳児期クルクミン摂取の影響 (2020– 2023)
□ Maternal broccoli powder intake during lactation ameliorates inflammation and insulin resistance by modulating the AMPK/mTOR pathway in the livers of high-fructose-fed male rat offspring exposed to maternal protein restriction. (2021– )
□ 潰瘍性大腸炎モデルマウスにおける抗炎症の分子機構と食品由来成分の効果(2024– )
院生の声
□ Y. M.さん:私は本研究室での研究生活の中で、小豆に含まれるポリフェノールが高血圧に伴う酸化ストレスや慢性炎症を軽減することを見出し、博士の学位を取得しました。研究活動とは、世の中の誰も(もちろん佐藤教授も)答えを知らない物事を、 自分自身で発見・解明していくという、苦しくも楽しい作業です。その過程で佐藤教授との多くのディスカッションを通して、 科学的なモノの見方・考え方も学ぶことができました。本研究室での研究活動は、その後のあらゆる仕事・活動に生きてくる体験だったと思っています。
□ S. K.さん:私は博士課程から基礎系の研究を行いましたが、佐藤先生にていねいにご指導いただき、博士号を取得することができ ました。現在は、管理栄養士としてスポーツ選手のサポートを行っておりますが、エビデンスに基づいたサポートを行うために は、基礎系の文献を理解し、ディスカッションをする能力が非常に重要だと感じています。あっという間の3年間でしたが、研究に対する姿勢や熱意がとても大切だと学びました。
当研究室への進学を希望する方へ
自らが、積極的に「自然」に問いかけ、誰もが見たことのない「未知なるもの」を見つけてください。 ともに学び、研究する楽しさやわくわくする気持ちを共有できる方をお待ちしています。
研究協力者募集
当研究室では、研究に協力あるいは参加していただける方を募集しています。
ご興味のある方は、どうぞ、ご連絡ください。